ベジタリアン
ベジタリアンとは
- ■ベジタリアンは、本来、「命を奪う、もしくは傷つけて得られる食品を食べない人」という意味を持つ。一般には「菜食主義者」とされ、「肉や魚などの動物性食品を食べない人」を表す言葉として使われるが、実際には、鶏肉や魚介類を食べるベジタリアン、卵を食べないベジタリアン、根菜も食べないインドのジャイナ教徒など、その種類は多岐にわたり、「ベジタリアン」という言葉でひとくくりに捉えることは難しい。
- ■ベジタリアンになる動機も人によって様々である。宗教、健康、嗜好が理由になる場合だけでなく、近年はアニマルライツ(=動物の権利)や地球環境の保全などの理由からベジタリアンになる人も多い。
- ■ベジタリアンには、乳製品を食べる「ラクト・ベジタリアン」(肉類・魚介類・卵は食べない)、乳製品と卵を食べる「オボ・ベジタリアン」(肉類・魚介類は食べない)、魚介類を食べる「ペスコ・ベジタリアン」(肉類は食べない)、鶏肉を食べる「ポーヨー・ベジタリアン」(鶏肉以外の肉類は食べない)、地下茎野菜や果物だけをたべる「フル―タリアン」などが存在する。最も厳格なベジタリアンは、一切の動物性食品(肉類・魚介類・乳製品・卵など)のほか、蜂蜜も食べず、革製品などの動物から得られる製品も使用しない「ヴィーガン」である。また、宗教的な理由から特定の曜日や期間に肉食を避ける人、願掛けのために肉食を避ける人もいるため、ベジタリアンの形態は千差万別であると言ってもよい。
- ■国際ベジタリアン連合(The International Vegetarian Union 略称 IVU、1889 年設立、本部:英国)では、植物性食品に加えて乳製品と卵の両方を食べてよい「ラクト・オボ・ベジタリアン」を基本的なベジタリアンと認めている。
- ■ベジタリアンは、米国、カナダ、英国をはじめとするヨーロッパ、インドや台湾をはじめとするアジアなど、世界中に分布している。特に人数が多い国はインドで、国民の半数以上を占めるとされる。台湾では国民の約 1割を占め、素食家と呼ばれる(中国にも素食家は存在する)。ヨーロッパでは英国が最も数が多く、国民の 2 割弱を占めている。
食に対する意識
- ■宗教を理由としたベジタリアンは、教義で定められた食事の規制事項を通じて、殺生を避けること、不浄を避けること、より高い精神性や倫理性を獲得することなどを強く意識する。信仰する教義が「生命」や「不浄」の対象をどの範囲で捉えるかによって、禁止事項が異なる。
- ■健康を理由としたベジタリアンは、本人の健康や美容(ダイエットなど)を強く意識する。生活習慣病や肥満などを避けるため、カロリーや油を多く含む肉類などを食べない。また、狂牛病や口蹄疫などの病気をはじめ、食の安全性を確保するため、牛肉を含めた肉食を避ける人が近年増加している。
- ■本人の嗜好を理由としたベジタリアンは、本人の好みやライフスタイルなどが意識される。メディアなどの影響を受けて、肉食を避けるようになる人もいる。
- ■思想(アニマルライツ、地球環境の保全など)を理由としたベジタリアンは、人道、倫理、環境を強く意識する。個人の肉食だけにとどまらず、現代社会の在り方(食料生産システム、動物実験、環境問題など)に対する社会思想や社会運動にまで関連してくる傾向が強い。
- ■ベジタリアンの意識において、上記の宗教・健康・嗜好・思想などの理由が混在していることも多くみられる。
食に対する禁止事項と嫌悪感
- ■肉全般、魚介類全般、卵、一部ではあるが乳製品、一部ではあるが根菜・球根類などの地中の野菜類、一部ではあるが五葷(ごくん:ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ)
- ■厳格なベジタリアンには、肉類を料理した調理器具が使われることを忌避する人もいる。
- ■魚介類全般を忌避するベジタリアンの場合、「鰹節の出汁」も対象であり、注意が必要となる。この場合には、「昆布出汁」などの野菜や海草を使った出汁を取る必要がある。
- ■「ブイヨン」「ゼラチン」「肉エキス」には鶏・牛・豚・魚の肉や骨が使われており、調理時に注意する必要がある。
- ■「バター」(牛乳の脂肪)、「ラード」(豚の脂肪)、「ヘット」(牛の脂肪)、「魚油」、「馬油」などの動物性脂は、調理時に注意する必要がある。「動物性脂」が使えない場合には、「植物性油」を使用する。
日本食で好まれるもの
- ■一般に、野菜天ぷら、豆腐を使った料理が好まれる。
日本食で好まれないもの
- ■野菜天ぷらは好まれるが、エビ・魚・肉類を一緒に(同じ油で)揚げることを嫌う人もいる。
良いおもてなしをするための推奨事項
- ■ベジタリアンは多種多様な種類が存在するため、「ベジタリアン」という呼称だけで、肉だけを食べない人と思いこんではならない。実際には鳥肉、魚肉、卵、乳製品を食べる人・食べない人がいるため、お客様が食べられないものが何かを必ず正確に確認する必要がある。
- ■相手の国籍が分かる場合には、事前にその国のベジタリアンの特性を理解したうえで、食べられない食材については必ず確認する。個別の対応を取ると喜ばれる。
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